【声明文】

国連子どもの権利条約の日本批准20周年・批准記念日を迎えるにあたって

子どもの権利条約の実施と普及を進める声明

2014年4月22日

子どもの権利条約批准20周年キャンペーン実行委員会

  2014年4月22日で、日本政府が子どもの権利条約を批准し、この条約の実現を法的に約束してから20年を迎えます。この条約は、子どもにかかわる取り組み、活動の世界基準です。私たちは、条約の実現をめざして、1993年から毎年、「子どもの権利条約フォーラム」(*1)を全国各地で開催してきました。20回目の批准記念日を迎えるにあたって、私たちは、子どもの権利条約の効果的な実施と普及にむけて呼びかけ(*2)を行っています。
 子どもの権利条約の提案国はポーランドです。第二次世界大戦で200万人以上の子どもを失ったポーランドは、子どもの権利条約を平和への有効な礎とするべく、その提案国となりました。子どもの権利の保障は、平和と不可分であり、また子どもの人間としての意思と要求を社会的に承認していく取り組みであり、人間社会の存続に向けた人類的な課題であると自覚されてきました。
 子どもの権利条約は、子どもをもっぱら保護の対象にしてきた子ども観を転換し、権利の主体として尊重することを求めています。子どもはいのち、暮らし、遊び、学びの権利をはじめ自分らしく生きていくための権利が尊重されなければなりません。
しかしながら日本では、未だに、子どもの権利の保障は子どものわがままを助長する、権利より義務という意見が世論を支配しています。おとなの意思や要求を押しつけることで多くの子どもが受け身になり、自信を失っている状況を変えていかなければなりません。
 日本においては、子どもの権利条約が十分に受け入れられていません。国連・子どもの権利委員会からの勧告(1998年、2004年、2010年)も誠実に実施しているとはいえません。子どもの権利条約が、20周年を節目として、日本の子どもの問題を解決していくために、以下のとおり活かされることを願い、ここに声明します。

(1)子どもの最善の利益の優先
子どもの権利条約が、開発途上国だけのものではなく、日本における子どもの幸福追求のために国内法として活用されることが必要です。子どもにかかわるあらゆる活動において、条約の原則である子どもの最善の利益の原則が優先されることが求められています。

(2)子どもの自己形成と参加の支援
子どもの権利条約を活かすことによって、おとなが子どもに向き合う姿勢、態度を見直す機会となることを願います。導いてやる、守ってやる、教えてやるといった態度ではなく、子どもの人間としての意思と力を信頼し、能動的な活動を支える力をつけることが大切です。子どもの自己肯定感の向上と共感的な関係づくりのために、子どもの自己形成と参加が支援され、子どもの声が受けとめられ、思いや願いが尊重されなければなりません。

(3)子どもが安心して生きる権利の保障
子どもの権利条約は、虐待、体罰、いじめなどの暴力、権利侵害から子どもが保護されることを求めています。子どもは安心して生きる権利、相談でき救済される権利が保障されます。そのためにも、子どもには、ホッとできる居場所、第三者的な相談・救済機関が必要です。

(4)東日本大震災・福島原発と子どもにやさしいまちづくり
東日本大震災・福島原発事故の被災者支援・被災地復興において、当事者である子どもの意見を聴きながら、安心・安全な子どもの居場所が確保され、遊びや学びの権利が保障されることなどが不可欠です。そのためには、子どもの権利条約の理念や規定が十分に活かされ、「子どもにやさしいまち」づくりが必要です。

(5)子どもの権利条約の広報と普及
子どもの権利条約はその趣旨や規定を子どもとおとなの双方に周知することを国に義務づけています。さまざまな方法で、とりわけ関係省庁・行政機関、裁判所、警察、学校や子ども施設などに広報していき、子どもにかかわる人たちが条約を理解することが求められています。またなによりも子どもたちが学び、知る機会が保障されなければなりません。

(6)国連・子どもの権利委員会からの勧告の実現
 国連・子どもの権利委員会が3回にわたって日本における子どもの権利条約の実施状況を審査し、条約の実現に向けて勧告(総括所見)を出しています。特に日本政府は、これらの勧告を受けとめ,誠実に履行しなければなりません。そのことが国際基準に基づき日本における子どもの状況をより良くすることにつながります。

以上

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